PE の重症度分類と治療について、ガイドラインをもとに整理します。
重症度分類

心停止例は V-A ECMO による ECPR を考慮します。
それ以外では、ショックであれば直ちに高リスクに該当し、再灌流療法の適応となります。
ショックではない場合は以下のように分類されます。
- 「sPESI = 0」かつ「右心機能障害がない」場合、低リスク
- 「右心機能障害があり」かつ「心臓バイオマーカー陽性」の場合、中[高]リスク
- 上記以外の場合、中[低]リスク
臨床評価 sPESI
患者背景やバイタルサインによって重症度を評価します。PESI やそれを簡易化した sPESI がガイドラインでは言及されています。
下記の各項目1点で計算し、0点は low risk、≧1点は high risk とする
- 80歳以上
- 癌の既往
- 慢性心不全 or 慢性肺疾患
- 心拍数 ≧ 110/min
- 収縮期血圧 < 100 mmHg
- SpO2 < 90%
右心機能障害
心エコーで右室機能不全があること自体が、独立した予後不良因子とされています。
下記のエコー所見がPEを示唆するものとしてガイドライン上指摘されていますが、いずれも感度は低く、除外には使えません。
心臓バイオマーカー
心臓への特異性の高いバイオマーカーを利用します。ガイドラインで提示されているカットオフ値は以下の通り。
| カットオフ値 | 単位 | |
| BNP | 75-100 | pg/mL |
| NT-proBNP | 600 | pg/mL |
| トロポニンT | 14 | pg/mL |
| トロポニンI |
治療選択
「右心不全+呼吸不全の治療」と「血栓源 (DVT) からの PE 再発の予防」の二本立てになります。まずは入院か外来かの判断について概観したうえで、治療法について記載します。なお、本稿では抗血栓療法について主に記載し、右心不全+呼吸不全の治療については簡潔にとどめます。
治療法と治療の場の選択 (入院要否)

再灌流療法は出血の危険も高く、高リスク例や中[高]リスク例で循環動態が悪化してきた場合に検討します。抗凝固療法には、古典的にはヘパリン+ワルファリンが用いられてきましたが、DOAC も適応が通っています。
治療はもっぱら入院下で行いますが、低リスク例では、他に入院すべき理由がなく、家族などの社会的サポートが期待でき、医療機関を容易に受診できる環境にある場合に限って、外来での治療も許容されています(リバーロキサバンによる外来治療により、PTE関連死 0 人であったとの報告あり)。
血栓源 (DVT) からの PE 再発の予防
抗凝固療法を行います。古典的にはヘパリン+ワルファリンが用いられてきましたが (IB)、現在のガイドラインでは血行動態が安定していれば DOAC の使用が IA で推奨されています。DOACは腎機能低下例で注意を要すること、薬剤によって急性期の用法用量が異なることに注意が必要です。エドキサバン (リクシアナ) は腎機能低下例にやや寛容ですが、急性期の高用量投与の適応はなく、ヘパリンなど他の抗凝固療法で治療を開始する必要があります。
抗凝固薬は少なくとも3ヶ月間は投与し、その後の継続要否はPEの誘引となった因子や出血リスクによって判断します。活動性のがん患者の場合には、癌が治癒しないかぎり継続します。

抗凝固薬の使い分けの詳細はPE・DVTの抗凝固療法も参考にしてください。
血栓溶解療法
- 血栓塞栓子を溶解し、肺循環を迅速に改善させる
- モンテプラーゼが日本での保険適応を得ている
- メタアナリシスで全死亡低下が示されているが、大出血リスクも有意に高い
- ショックや低血圧が遷延する急性PTE (高リスク) には血栓溶解療法を施行 (IB)
- 血圧は正常だが「右心機能不全&心臓バイオマーカー陽性」の例では、非経口抗凝固療法を行い、循環動態悪化時には血栓溶解療法を考慮 (IIaB)
呼吸管理
- PaO2 60 mmHg 以下、SpO2 90% 以下を閾値として酸素投与を行う
- 高流量鼻カニュラ (HFNC、いわゆるネーザルハイフロー) を検討する
- HFNCを含む酸素吸入で SpO2 ≧ 90% を維持できなければ挿管を考慮。 ただし、陽圧換気は右心不全増悪につながりうるので注意(胸腔内圧↑により静脈還流↓となり、右心不全が増悪)
- 一回換気量は少なめに 6 mL/kg (理想体重) が推奨
循環管理
- 肺血管床の減少、肺血管抵抗の増加(∵ 低酸素+ケミカルメディエーターによる肺血管攣縮)によって循環不全をきたします。
- 容量負荷
容量負荷の是非は基礎研究レベルでも決着が付いていない - 薬物療法
- 血圧が保たれていればドブタミン、血圧低下例ではノルアドレナリン、という選択がなされることが多い (ガイドラインより) ノルアドレナリン vs ドパミンでは、ノルアドレナリンのほうが不整脈が少なく28日死亡が少ない
- ドブタミンは心係数改善&肺血管抵抗低下の報告あり
- ミルリノン (PDE3阻害薬) には強心作用とより選択的な肺血管拡張作用あり
- NO吸入
- NO吸入によって肺動脈を選択的に拡張させることができ、理論上は換気血流不均衡を改善できるが、臨床的なエビデンスには乏しい。心臓手術周術期のみ保険適応
- V-A ECMO
- 内科治療が奏功しない場合は、速やかに V-A ECMO を検討する
参考資料
脚注
- 右室/左室比 ≧ 0.9 となると右室機能不全と判断する ↩︎
- 右室心尖部の収縮は保たれ、右室自由壁の壁運動は低下する。https://www.youtube.com/watch?v=aLGB9V3YDQc ↩︎
- 右室右房間圧較差 < 60 mmHg かつ 右室流出路駆出血流加速時間 < 60ms ↩︎



コメント