肺炎球菌ワクチン

感染症内科

肺炎球菌ワクチンは種類が多く、エビデンスも煩雑なうえ、国の定期接種制度の把握も必要です。UpToDate、厚労省サイトなどを参考に、現状をまとめました。

肺炎球菌ワクチンの種類

肺炎球菌ワクチンにはポリサッカライドワクチン (penumococcal polysaccharide vaccines; PPSV) と結合型ワクチン (pneumococcal conjugate vaccines; PCV) の2種類があります。

ポリサッカライドワクチン

PPSVは莢膜のポリサッカライドからなるワクチンです。23価のPPSV23が発売されています。1980年代の成人で、肺炎球菌感染症の主たる起因菌だった23の血清型を含んでいます。

結合型ワクチン

PCVは莢膜のポリサッカライドをキャリア蛋白に結合させたものでできています。ヘルパーT細胞が関与するため、免疫が成熟していない小児でも効果が期待でき、免疫原性にも優れるといわれています。日本国内では、PCV15 (バクニュバンス)、PCV20 (プレベナー20)、PCV21 (キャップバックス) が販売されています1

成人で侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす肺炎球菌の血清型のなかでは、PCV21は77-85%、PCV20は54-62%(参考:PPSV23は60-67%)をカバーすると考えられています。

PCVは粘膜の免疫にも作用するため、肺炎球菌の鼻腔への定着も防ぐことができるとされています。このため、集団のなかで肺炎球菌の感染自体が減少し、集団免疫を期待できます。一方、ワクチンでカバーされた血清型の菌が排除されるにつけ、カバーされていない型の菌に置き換わっていくことも報告されているようです。

ワクチンの適応

UpToDateの記載では、

  • 50歳以上。65歳以上では特に有益
  • 19-49歳のうち、
    • リスクとなる素地がある場合(慢性肺疾患、慢性冠疾患、心不全、糖尿病)
    • 髄膜炎高リスク(人工内耳、髄液漏)
    • 免疫機能が低下している例(HIV感染、血液腫瘍、CKD、ネフローゼ)
    • 無脾症
  • 侵襲性肺炎球菌感染症の既往のある人

ワクチンの選択

接種歴のない成人

CDCは以下を推奨しています。UpToDateの記載では、血清型4の特別なリスクがある場合2を除き、PCV21を勧めるとしています。

  • PCV21★
  • PCV20
  • PCV15→PPSV23 (1年開けて、または免疫不全例などでは8週間以上開けて)

接種歴がある場合

  • PPSV23、PCV10/13のみの場合:1年以上あけてPCV21を接種3
  • PCV10/13+PPSV23の場合:
    • 50歳以上であれば、5年以上あけてPCV21を追加接種するのが原則4
    • 19-49歳の慢性疾患患者では、CDCは追加接種を推奨していない。他方、UpToDate筆者はPCV21を5年以上あけて接種することを勧めている
    • 19-49歳で髄膜炎のリスクがある場合、5年以上あけてPCV21を接種する
    • 19-49歳の免疫不全者では、5年以上あけてPCV21を接種する

追加接種の要否

肺炎球菌ワクチン接種を完了したのち、追加接種を要するかどうかについて、はっきりしたところはわかっていません。UpToDate 筆者らは、少なくともPPSV23であれば5-10年ごとの接種が望ましいと記載しています。PCV21接種後の追加接種は原則として推奨はされていないようですが、UpToDate筆者らは、PPSVとPCVの差は明らかではなく、PCVでもいずれ同様に追加接種が推奨されるようになるかもしれない、との立場です。

日本の制度

高齢者の肺炎球菌感染症は定期接種B類疾病で、一部が公費負担されうる定期接種のワクチンです(麻疹などの公費で原則全員の接種が求められるA類疾病の定期接種とは異なる)。

5歳刻みで接種可能だった経過措置は2024年で終了してしまったので、現在は、65歳ちょうどの者か、60〜64歳で基礎疾患などがある者のみが、生涯で1回限り、定期接種の対象となります(上記以外は自己負担)。

定期接種のワクチンは、以前まではPPSV23(ニューモバックスNP)が使用されていました。2026年4月からはPCV20(プレベナー20)に変更になっています。PCV21(キャップバックス)は2025年8月に薬事承認されたばかりで、まだ定期接種に組み込まれていませんが、今後、定期接種に導入することを検討する方針のようです5

日本の高齢者に対する現実的な対応(2026年度版;本サイト筆者私見)

肺炎球菌ワクチン接種歴がない場合

  • 65歳ちょうど or 60-64歳で基礎疾患がある場合:PCV20(プレベナー20)であれば定期接種、PCV21(キャップバックス)は自費だがよりカバー範囲が広い旨を説明し、どちらを打つか相談する
  • 66歳以上の場合:どうせ定期接種としての助成は効かないので、基本的にはPCV21(キャップバックス)を勧める

肺炎球菌ワクチン接種歴がある場合

  • PPSV23(ニューモバックスNP)の接種歴がある場合:どうせ定期接種としての助成はきかない。とはいえPCVを追加接種することが推奨されている。上記の通り、1年以上あけて、PCV21(キャップバックス)を追加接種することを勧める。その後は、更に繰り返してPCV21を接種することを推奨する根拠は見当たらない
  • PCV21(キャップバックス)の接種歴がある場合:それ以上接種を繰り返すことを推奨する根拠は見当たらない

参考文献

脚注

  1. PCV7、PCV13はすでに国内の製造販売が終了している。肺炎球菌ワクチンの国内導入経過(2025年12月現在)| 国立健康危機管理研究機構 ↩︎
  2. Navajo nation の居住者、米国・カナダの西部に在住する薬物使用やホームレス生活の経験のある者 ↩︎
  3. 血清型4のリスクや供給状況次第ではPCV20 ↩︎
  4. PPSV23を65歳以上で摂取しているのであれば、PCV21の追加接種要否ははっきりしないよう。CDCは「shared decision making を要する」としているようだが、UpToDate筆者はあくまで追加接種を進める立場である ↩︎
  5. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001589553.pdf ↩︎

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