好酸球増多への対応

内科

アレルギーや寄生虫感染で上昇することで知られる好酸球ですが、極端に増加した場合には、好酸球それ自体が組織を傷害する可能性があります (好酸球増多の原因によらず)。無症状の健診異常から、臓器障害を伴う好酸球増多症候群 (HES) としてときに心臓や神経の傷害をもきたし得、注意が必要です。

今日の臨床サポートホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版をもとに整理します。

増多の定義

好酸球数は、通常は末梢血WBCの1-5%程度、絶対数 50-500/uL 程度です。末梢血好酸球数 ≧ 500/uL の場合、好酸球増多といいます。なかでも、好酸球数 ≧ 1500/uL が2週間以上の間隔で2回以上みられる場合を好酸球増多症 (hypereosinophilia; HE) と呼び、さらにHEのうち好酸球増多による臓器障害や機能障害があるものを好酸球増多症候群 (hypereosinophilic syndrome; HES) と定義します。

疾患略語定義
好酸球増多症
(Hypereosinophilia)
HE≧1500/μL の2週間以上の間隔で2回検出されること。Tissue HE の有無は問わない。
組織好酸球増多症
(Tissue hypereosinophilia)
組織HE以下のうち1つ以上に該当すること:
a) 骨髄組織の有核細胞の > 20%が好中球であること
b) 組織の好中球浸潤が高度であると病理医が判定すること
c) 著明な好酸性顆粒蛋白の沈着があること (好中球浸潤の有無を問わない)
好酸球増多症候群
(Hypereosinophilic syndrome)
HESa) HE の基準を満たし、
b) 組織HEに起因しうる臓器障害や機能障害があり、
c) 臓器障害の主原因となる他の疾患がないこと
組織局在HES
(臓器局在HES)
a) 組織HEであるが血液のHEの基準を満たさず、
b) 組織HEに起因しうる臓器障害や機能障害があり、
c) 臓器障害の主原因となる他の疾患がないこと
Valent, P. et al. 2023. Table 1 による

症状がない場合

今日の臨床サポートによれば、

  • 好酸球数 500-1500/uL で症状がない場合:精査不要のことが多い
  • 好酸球数 ≧ 1500/uL で症状がない場合:原因が明らかでなければ、2週間後再検

精査の閾値となる好酸球数は特に定まっていません。無症候性の場合もあるため、≧ 1500/uL であればひととおり臓器障害を検索する、と今日の臨床サポートは記載しています。SpO2、胸部X線写真、心電図に加え、心エコー、真菌トロポニン、胸部CT、呼吸機能検査を検討します。

臓器障害の検索のために考慮する検査

以下を考慮します1

  • 心臓の評価:心電図、心エコー、トロポニン
  • 血算小の評価:D-dimer
  • 神経伝導検査 (下肢のしびれ、脱力がある場合)
  • 生検

臓器障害がある場合

産生された好酸球の90%以上は、血流を介して組織に移行します。その組織浸潤や活性化が極端に高まると、臓器障害をきたすことがあり、特に皮膚、肺、消化管、心臓が障害されやすいとされています。心臓や肺、神経の障害は、緊急の治療を要しうるほか、予後を規定する場合があります。

なお、好酸球数の多寡と臓器障害リスクは相関しないと考えられています。

緊急性のある場合

心臓、肺などの障害のため緊急性がある場合、好酸球数 > 10万/uL の場合は、原因検索をスキップし、副腎皮質ステロイドを投与する場合があります。

投与前に、以下の検査を行います (ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版)。

  • 血液検査 (血算、トロポニン、トリプターゼ、ビタミンB12、MPO-ANCA、PR3-ANCA、抗核抗体、寄生虫スクリーニング、糞便検査)
  • 骨髄穿刺
  • 胸腹部CT、心エコー、迅速に採取可能な生検

好酸球増多の原因の検討

アレルギーや薬剤、寄生虫などによる二次性好酸球増多 (二次性HE、反応性HE) をまず除外します。二次性が除外されれば、血液内科にコンサルトし、末梢血のFISHやRT-PCR、骨髄検査などをでクローン性/腫瘍性の一次性HEの可能性を検討します。

二次性好酸球増多の原因

好酸球増多全体でみれば、薬剤性やアレルギー性・アトピー性の頻度が高いです。他方、好酸球数 ≧ 5000/uL の症例に限ると、血液疾患・血液腫瘍が62%と最多で、薬剤性過敏性症候群、固形腫瘍、特発性HESと続いたと報告されています (Am J Med. 2021 Jun;134(6): e374-7; ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版より孫引き)。

また、日本では寄生虫感染は希少ではあるものの、ステロイドや免疫抑制剤を使用することがあるため、否定には慎重になる必要があります。リストで示します2

  • 頻度の高い原因
  • 比較的珍しい原因
  • 薬剤性 → 被疑薬中止
  • アレルギー性鼻炎 → IgE測定、アレルゲン検索
  • アトピー性皮膚炎 → 皮膚所見、血清IgE、血清TARC
  • 気管支喘息
  • 寄生虫感染 → 問診、虫卵検査、抗体検査
  • 他の感染症:ウイルス感染症 (HIV, HTLV-1), 結核, アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
  • 急性白血病 → 好酸球以外の血算異常、骨髄検査
  • 骨髄異形成症候群 → 高齢者の血算異常; 骨髄検査、染色体検査
  • 慢性骨髄性白血病 → 好中球・好塩基球とも↑、LDH↑、脾腫。骨髄検査、染色体検査
  • 悪性リンパ腫 → リンパ節腫大があれば生検を検討
  • その他の悪性腫瘍 → 腫瘍の症状、倦怠感・体重減少など
  • 好酸球増多をきたす骨髄増殖性腫瘍
  • 副腎不全 → 早朝コルチゾール
  • 臓器特異的疾患 (下記の通りHESには含めない)

特定臓器に限局している場合

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA; Churg-Strauss 症候群)3、好酸球増多筋痛症候群、IgG4関連疾患4、好酸球性血管性浮腫 (EAE; Gleich 症候群)5 は、いずれも好酸球増多に関連した臓器障害をきたす疾患です。病態上は、好酸球増多症候群 (HES) の特殊型と考えられます。ただし、これらの症候群は、定義上はHESとは区別されています。

また、好酸球性胃腸炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎などの疾患でも好酸球は上昇しますが、これらでは好酸球そのものが臓器障害に関与しているか否かが明らかではなく、HESとは区別されています。

Clinical Pearls

  • 500-1500/uL の軽度の好酸球増多はアレルギー性、アトピー性、薬剤性を疑う (今日の臨床サポート)
  • 好酸球数が著明に増加している場合は、EGPA、白血病、狭義のHESを考える (伝聞)
  • 「好酸球はALLERGIC」:Adrenal, Lymphoma, L-tryptophan (好酸球増多筋痛症候群), Eczema, Respiratory, Gastrointestinal, Infection, Connective tissue diseases (ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版)

参考文献

脚注

  1. ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版 ↩︎
  2. 総合内科病棟マニュアル, 今日の臨床サポート ↩︎
  3. 好酸球増多症におけるEGPAの評価には、E-CASE score を利用できる。ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版 ↩︎
  4. 20%に好酸球増多があり、好酸球増多例は非増多例と特徴が異なる ↩︎
  5. 好酸球増多を伴う反復性の血管浮腫。若年女性に多く、月経・妊娠と関連し、発作間欠期は無症状である。ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第3版 ↩︎

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