振戦の分類と原因疾患

病棟や外来でよく出会う「ふるえ」。大部分は原因がはっきりしないものですが、ほかの病気の診断の手がかりになる「ふるえ」もあります。ですが、振戦の分類や用語には教科書によって多少の差異があり、正直わかりづらいですよね。

あなたも名医!眼で見て実践!できる!ジェネラリストのための神経診察の西村寿貴氏の分類(もとは近藤智善 (2011) 神経治療 28(3) 304-7 によるよう)がわかりやすかったので、ご紹介します。

振戦の分類

  • 安静時振戦:安静時に出現する振幅の大きい振戦。Parkinson病など。
  • 姿勢時振戦:重力に抗して肢位を保ったときに現れる振戦。本態性振戦など。
  • 運動時振戦:随意運動時の振戦。小脳病変など。
  • 企図振戦:目標に近づくほど増悪する振戦。小脳病変など。
  • 運動過多:企図振戦+反抗運動。小脳・脳幹病変。
  • 混合性
本項の参考文献

各論

安静時振戦

安静時に出現し、随意運動で軽減する、4〜7Hz(1秒に4〜7回)の振幅の大きな振戦です。Parkinson 病でみられるいわゆる pill-rolling tremor が代表的です。理想的には臥位で診察すべきとされていますが、椅子に座ってもらった状態で確認することのほうが多いでしょう。

暗算などをさせ精神的な負荷をかけると増強し、観察しやすくなります。また、いわゆる上肢Barreの肢位を取らせると数秒後に振戦が現れることがあり、re-emergent tremor と呼ばれています。つまり、腕を持ち上げるという随意運動によって振戦がいっとき軽減したのち、上肢Barreの姿勢を保つことで手先が「安静」の状態となるため、振戦が顕在化するのです。

姿勢時振戦

重力に抗して姿勢をとったときに現れ、随意運動で増強する、4〜12Hzの振幅の小さな振戦です。本態性振戦が多いものの、アルコール離脱や薬剤性でもみられることがあります。上肢と頸部に出現しやすいです。

上肢を前に挙上させると振戦を確認できます。
眼の前にいる友人の耳にイヤホンをつけてやろうとすると震えてうまくいかないイメージです(下記の企図振戦のように耳に近づくほど増強するわけではない)。

なお、本態性振戦であってもアルコール摂取で軽減することが知られており、飲酒後にふるえが和らぐというだけでは離脱症状だと断定することはできません。

運動時振戦

随意運動時に出現する、振幅・頻度とも不規則な振戦です。運動失調によって動きが定まっていない状態で、小脳の異常で生じます。

企図振戦

目標に近づくほど強くなる振戦で、5Hz以下の遅いふるえを呈します。指鼻指試験で確認しやすいです。動作が終わった後も、細かい振戦が出続けます。小脳の異常で生じます。

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