Cheyne-Stokes 呼吸

Cheyne-Stokes 呼吸とは

Cheyne-Stokes 呼吸は、無呼吸 (apnea) と深い呼吸 (hyperventilation) を周期的に繰り返す呼吸様式です1。19世紀初期に John Cheyne と William Stokes によって報告されました。心不全や脳卒中と関連しているといわれており、脳損傷をきたした症例でこの呼吸が見られると神経学的予後が不良であることが示唆されます2

By Sav vas – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21156397
CC BY-SA 3.0 での配布に基づく切り抜き; 本画像も CC BY-SA 3.0

The American Academy of Sleep Medicine (AASM) の基準では、以下を満たす場合に Cheyne-Stokes 呼吸と判断することになっています。

  • 中枢性の無呼吸や呼吸低下 (hypopnea) が連続して3回以上あり、その合間は呼吸の強さがクレッシェンド・デクレッシェンドとなっていて、1周期が少なくとも40秒(典型的には45-90秒)であること
  • 2時間の間に中枢性の無呼吸・呼吸低下が1時間に5回以上ある(クレッシェンド・レクレッシェンドのパターンと関連していること

通常、PaCO2値が通常より 4~6 mmHg 低いと呼吸が抑制され (apnea threshold)、睡眠中はそれよりわずかに低い値が閾値となります。心不全患者ではこの差が縮まり、頻呼吸傾向のためPaCO2自体が低くなりやすいため、PaCO2が apnea threshold 付近を変動し、Cheyne-Stokes 呼吸をきたす、とRudrappa, M. et al. では説明されています。

Cheyne-Stokes 呼吸をきたす疾患

古典的には大脳皮質・基底核・内包の広範な障害によって生じるとされていたようですが、片側の大脳辺縁系脳幹の虚血でも生じうると報告されています3。具体的には、

  • 尿毒症などの代謝性能症
  • 心不全、ショックによる脳の循環不全
  • PaO2 < 20 Torr の高度低酸素による脳の低酸素
  • 生理的な大脳辺縁系の萎縮(高齢者)

初期対応

Airway・Breathing (低酸素)、Circulation (心不全・ショック) の問題を除外し、代謝性脳症の評価を行ったうえで、脳そのものの疾患を考えます4。すなわち、低酸素→ショック→尿毒症と除外していき、いずれでもなければ脳の虚血が鑑別に残します。片側半球の脳梗塞、脳幹の脳梗塞でも生じうるので、神経所見を確認し、頭部の評価も行います。

鑑別を要する病態

  • 群発呼吸(Cluster 呼吸)5
    • Cheyne-Stokes呼吸同様に大きな呼吸と無呼吸を繰り返す。急に大きな呼吸が現れ、急に止まるのが特徴で、Cheyne-Stokes呼吸のようにクレッシェンド・デクレッシェンドのパターンはとらない。
  • 失調呼吸(Biot 呼吸)
    • 回数・リズム・深さとも不規則な呼吸で、呼吸停止してしまうこともある。Parkinson病、神経変性疾患、延髄梗塞など。

参考文献

  1. Rudrappa M, Modi P, Bollu PC. Cheyne Stokes Respirations. [Updated 2023 Jul 31]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK448165/ ↩︎
  2. ↩︎
  3. バイタルサインからの臨床診断 改訂版 豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく! p139; Lee, M. C. et al. Respiratory Pattern Disturbances in Ischemic Cerebral Vascular Disease. Stroke 1974. ↩︎
  4. バイタルサインからの臨床診断 改訂版 豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく! p139-140 ↩︎
  5. バイタルサインからの臨床診断 改訂版 豊富な症例演習で、病態を見抜く力がつく! p47 ↩︎

コメント

タイトルとURLをコピーしました